今回、同イベントの会場で、本作のエグゼクティブプロデューサー・牧田和也氏へインタビューをすることができた。次世代機での開発や、進化したポイントなど、気になる質問をぶつけてきたので、その内容を紹介しよう。
――まずは、これまで全貌が見えなかった、次世代ハードに関する話からお聞かせください。PS3/Xbox 360と、PS4/Xbox Oneでは、具体的にどのような違いが生まれるのでしょうか。
牧田和也氏
牧田氏:大きな違いはメモリーの容量と、CPUのスピードです。ゲームソフトを作る人間は、常にこの2つに頭を悩ませていて、PS3やXbox 360は、毎回ギリギリのところまで使い切っての開発でした。
今回はメモリーもCPUも、性能が格段に上がったため、今までできなかったことも実現できるようになりました。例えば「FIFA 14」ですと、AIがさらに賢くなりましたし、選手のモーションもより滑らかに動かすことが可能です。
――では、同じ「FIFA 14」であっても、現行機と次世代機ではまったく違った印象になっていると。
牧田氏:方向性は同じなので、例えばPS3版からPS4版に移った際、操作に戸惑うことはありません。ですが、アニメーションが滑らかになったことでよりリアルになりましたし、サッカーらしさがより洗練されました。実際にPS4版を触ると、それまでの感覚とは相当違うと思いますよ。
――EA SPORTS共通のエンジン「IGNITE」での開発はいかがでしたか?
牧田氏:私個人としても、EA全体としてもハードの切り替えは何度もしてきたことですし、過去にどんな失敗をして、どのような準備をすればいいかというノウハウは持っていました。そのノウハウを活かして開発したエンジンが「IGNITE」になります。
新ハードがどのタイミングで発売されるかは、私たちでは把握しきれないのですが、そのローンチにソフトを出せるのも「IGNITE」で他のチームと技術を共有できたおかげです。先を見据えた開発を行えることが、「IGNITE」最大の強みですね。
――「Madden NFL 25」「NBA LIVE 14」「EA SPORTS UFC」といった別作品のチームとつながりが出来たことで、作業の効率化に成功したのですね。
牧田氏:どれかひとつの作品に限定することなく、みんなで同じ目標へ盛り上がっていけるのは確かな強みだと感じています。
――PS4版は本体と同じく2014年2月22日発売ですが、それだと冬の移籍市場が終わった後ですよね。
牧田氏:ええ。冬の移籍市場をゲームに反映させるかはまだ決定していないのですが、これまで同様、次世代機でもアップデートを随時行う予定ですし、常に最新の状態で遊べることは間違いないので安心してください。
――オンラインやソーシャルの要素も次世代機の魅力だと思いますが、そのあたりはどう活かそうと考えていますか?
牧田氏:ソーシャルと呼ばれる部分には今までも力を入れてきましたし、前作でも世界中のプレイヤーさんと対戦・交流が楽しめる「FIFAシーズン」は、非常に高い評価をいただきました。
私たちとしてはこれまでに培ってきたモードを引き続き搭載することが重要だと考えていますし、加えて、PS3とPS4の間、もしくはXbox 360とXbox Oneの間でセーブデータを移す機能も存在します。もちろん実績やトロフィーも移行できるので、プレイヤーさんはいつでも次世代機に乗り換えられます。
――セーブデータの移行と言いますが、具体的にはどこまで引き継げるのでしょうか?
牧田氏:選手、監督、スタッフを集めてオリジナルチームを結成する「Ultimate Team」のデータや、「バーチャルプロ」で作った顔、ゲーム内通貨など、プレイヤーさんから好評のモードやシステムは基本的にすべて引き継げます。
――お話にあった「Ultimate Team」ですが、こちらには新要素が入るのでしょうか?
牧田氏:「ケミストリースタイル」という新要素を導入します。これは特定のポジションのみが得意だった選手に、他のポジションへも対応できるようにするシステムです。今まではせっかく良い選手を入手しても、チームのフォーメーションに合わないからオークションに出していた方も多いと思います。今回は「ケミストリースタイル」のおかげで、プレイヤーさんが思い描く理想の11人が、さらに作りやすくなりました。
――「Ultimate Team」をプレイしていると、つい有名な選手ばかり集めてしまって、上手くチームが作れないケースもありますし、画期的なシステムですね。
牧田氏:理想の選手と理想のフォーメーションを同時に実現できますし、選手の特徴も引き出しやすくなっています。足が早かったり、ドリブルが上手かったりといった、一芸に秀でた選手の使い道も広がるので、サッカーに詳しい人であれば、より多彩なチームが作れるようになっています。
――ハンズオンイベントの時は制作途中ということもあり、パスが通りにくい印象でしたが、その後どのように改善していったのでしょうか。
牧田氏:選手のパラメータはもちろん、ボールの挙動なども細かく調整したので、不自然なミスもすべて潰しています。
――東京ゲームショウ 2013の試遊台を見ると、選手の切り返しがさらに滑らかになった印象を受けました。
牧田氏:今回は選手の足の動きをすべて計算していた、プレイすると、一歩の重みを感じられると思います。次の動作のためには、前の一歩をどうすべきかを常に考えているので、切り返しだけを見ても、同じ動きになることはほとんどありません。
――選手の動きが滑らかになると、ゴールへの道筋もさらに豊富になりますよね。
牧田氏:やはりサッカーの醍醐味は、シュートであり、ゴールだと思うのです。これまでもこだわっていた部分ではありますが、もっとドラマチックなものにしたいと考え続け、今回はボールの弧の描き方や、蹴る瞬間のモーションなど、ありとあらゆる場面を想定して作りました。
無理な体制からのシュートなども、かなりリアルに仕上がっているので、ぜひ注目してもらいたいですね。
――ちなみにですが、牧田さん自身はどんなゴールが好きですか?
牧田氏:いろいろありますが、私がプレイして気持ちいいと感じるのはロングレンジからのシュートですね。「この距離だと厳しいだろう」と思える場所から狙って、それが実際に入ったときの感動は、ほかのゴールにはないです。
――ロングシュートは、そもそも練習する機会があまりないですし、感動も一段と増しますね。
牧田氏:ディフェンスの間を抜けて、ゴールの隅の方へ吸い込まれる瞬間は本当に気持ちいいです(笑)。ロングシュートは選手の能力や足の位置など、計算しなければいけないことが多いので、プレイする人のスキルがダイレクトに反映されますし、上手く入るとかなり格好いいと思います。
――次世代機版だと、観客やスタジアムなど、細かいところまで忠実に再現されていると感じました。
牧田氏:そこも次世代機ならではのポイントですね。これまではメモリーの問題もあり、なかなかグラウンドの外まで作りこむことは難しかったのですが、観客はもちろん、ボールボーイやカメラマンなど、ゲームには直接関係のない部分まで作り込むことができました。
スタジアムの外観に関しても同じで、ライトがあったり、走っている車があったり、すべてにおいて現実の中継と遜色ないレベルに達しています。
――細かい演出では、現実の試合中継をかなり意識していますよね。
牧田氏:欧州のリーグだと1試合に30台、Jリーグだと10台前後のカメラを使って中継を行っています。ですが「FIFA 14」では、130台分のカメラワークを用意しているので、テレビでは見られないようなシーンも実現できています。
――2014年はワールドカップのシーズンですが、本作を開発するにあたって、意識したところはありますか?
牧田氏:専用のモードが入っているわけではありませんが、ワールドカップのライセンスホルダーとして、今後さまざまなことを発表していこうと考えています。
――そちらの発表も楽しみに待っています。ちなみに、今回のワールドカップで牧田さんが注目しているチームはありますか?
牧田氏:もちろん日本代表は応援しますが、それ以外だとやはりブラジルですね。開催国ですし、ネイマールを中心にどうチームをまとめてくるかは非常に楽しみです。
あと、私は統率がとれているドイツのプレイスタイルも好きですし、面白い存在になるかと予想しています。
――最後に、発売を楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします。
牧田氏:開発チーム一丸となって、120%のサッカーゲームを作れたと自負しています。今までにないほどの力作ですし、これをステップに次世代機へ移行していけたらと考えているので、本作はもちろん、今後の展開も楽しみにしてください。
――ありがとうございました。